アメリカの平均年収は、2024年のデータで約900万円程度だとされています。
あくまでも平均値で、中央値ではないものの、日本よりも平均収入が高いのは間違いないようです。
日本は衰退が叫ばれてから早数十年経ち、特に若年層の収入が社会問題になっていますが、社会構造に問題を孕んでいるのは実はアメリカも同じ。
このコラムでは、アメリカの平均収入と日本との違い、そして州ごとの違いについて解説していきます。
1.アメリカの平均年収は約900万円
1-1.アメリカの中央値の年収は?
1-2. アメリカの平均年収は世界全体で何位?日本は?
2.日本は相対的に賃金が下がり続けている
2-1. 日本の平均年収が低い理由は?
3.アメリカで高収入の業界
4.アメリカで高収入の職種TOP5
4-1.5位 整形外科医
4-2.4位 救急医療専門医
4-3.3位 口腔顎顔面外科医
4-4.2位 麻酔科医
4-5.1位 循環器専門医
5.アメリカでは州によっても平均収入に格差がある
6.平均収入が高い=豊かとは限らない
6-1.物価が高い
6-2.医療費や不動産も高い
6-3.世界的に根深い人権問題
7.日本がアメリカから見習うべき点は多い
まとめ
アメリカの平均年収は約900万円
GDPが世界1位のアメリカ。アメリカ合衆国労働省労働統計局(BLS)によると、アメリカの平均年収は約897万円(65,470ドル)です。
※2023年5月当時の137円/USDで計算
対して、2024年時点でGDPが世界4位の日本の平均年収は、国税庁「令和4年分民間給与実態統計」によると458万円です。日本とアメリカでは、年収の差が2倍近くあることが分かります。
ちなみに、GDP世界2位の中国の平均年収は都市部であっても約260万円(12万698元)です。中国は農村地域の収入が極端に低いため、国全体で考えると100万円超が平均となるでしょう。
GDPと国民の平均収入は比例しないので、国力や経済レベルを知りたいときは注意が必要です。
アメリカの中央値の年収は?
平均年収とは、年収の総額を人数で割った数字なので、高収入の人と定収入の人が同じ数だけいるわけではありません。たとえば、年収1億円のお金持ちが1人と、収入ゼロの4人の計5人の平均年収は、2,000万円になります。
そのため、中間の数字、もっとスタンダードな年収を知りたい場合は「中央値」を見なければなりません。アメリカ合衆国労働省労働統計局によると、アメリカの年収の中央値は約659万円(48,060ドル)でした。
※2023年5月当時の137円/USDで計算
令和4年分民間給与実態統計によると、日本人の年収の中央値は約396万円でした。2倍とまではいかないものの、日本とアメリカでは一般的な収入に近い中央値でも、かなりの差があることが分かります。
アメリカの平均年収は世界全体で何位?日本は?
アメリカの平均年収は、経済協力開発機構(OECD)の2024年の調査によるとルクセンブルク・アイスランド・スイスに次いで4位です。
画像引用元:平均賃金 (Average wage) – OECD
ルクセンブルク・アイスランド・スイス・アメリカは、同調査においてトップクラスの常連です。
ルクセンブルクはヨーロッパでも有数の金融センターとして世界でもトップクラスに豊かな国として有名で、アイスランドは漁師の年収が2000万円を超えることも珍しくありません。スイスは、言わずと知れた金融国で、世界で最も国際競争力のある国として、世界の金融の中心となっています。
アメリカでも過去20年で平均年収は25%もアップし、世界のイノベーションをリードしています。
ちなみに日本は25位、以下でご紹介した以前のデータよりも順位を下げ、 OECDの平均値にも遠く及びません。
参考:経済協力開発機構(OECD)「Average annual wages」
参考:国税庁「令和4年分民間給与実態統計」
日本は相対的に賃金が下がり続けている
日本で不況が叫ばれてはや何十年経ちますが、世界的にみても日本は「安い国」になっています。
年収400万円は30年前とほぼ同じ水準。
経済が成長していれば30年経てば平均所得や物価も上昇するはず。実際に、アメリカを始めとする諸外国では平均賃金は上昇しています。
日本の平均賃金は、アメリカ・カナダ・ドイツ・フランス・イギリス・イタリア・日本で構成されるG7の中で最下位です。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では385ヶ国中252位。
1989年、世界の時価総額ランキングは日本の企業がトップをほぼ占めていました。
しかし、30年後のランキングでは50位以内に1社のみ。
画像引用元:日本企業の時価総額ランキング。トヨタ、ソフトバンクの実力は?|転職Hacks
仮に30年前の勢いを保っていたとしても、現在のランキングではトップに食い込むことも難しいのです。
画像引用元:日本企業の時価総額ランキング。トヨタ、ソフトバンクの実力は?|転職Hacks
それは株式市場にも現れていて、日本経済が相対的に衰退していることは私たち1人1人が危機感を持って受け止めねばならない事実と言えます。
日本の平均年収が低い理由は?
日本の平均年収が世界的に見て低い理由としては、色々な理由があると考えられています。
- ・年功序列や終身雇用など古い制度の重用
- ・長らく続いた金融緩和政策
- ・労働生産性が低い環境
- ・非正規労働者を増加させる政策
- ・家電や車などの産業の衰退
- ・IT化の遅れ
などが景気後退の要因ではないかと考えられます。
どれかひとつが主な原因!と論じられることも多いですが、マーケットは仕組み・環境・人材・競合・政治など複数の要因が複雑に絡み合って機能するため断言することは難しいです。
それに加えて、ロシアによるウクライナ侵攻後の急激な円安によって日本の賃金は相対的にさらに低くなってしまいました。
社会問題や政治について話すことはなにかと避けられることが多いですが、私たちの生活に密接している問題なので、カジュアルに有意義な話し合いができるようになって社会をより良くしていきたいですね。
アメリカで高収入の業界
アメリカ合衆国労働省労働統計局のデータによると、業界によって平均年収が大きく異なります。
【アメリカで高収入の業界TOP5】
- 1.情報通信業:108,110ドル(約1,481万円)
- 2.企業経営管理業:106,640ドル(約1,460万円)
- 3.専門的・科学的・技術的サービス業:102,670ドル(約1,460万円)
- 4.公益事業(電気・ガス・水道):106,640ドル(約1,406万円)
- 5.金融業・保険業:94,150ドル(約1,289万円)
対して、最も低収入なのは、宿泊・飲食サービス業で、平均年収は36,220ドル(約496万円)でした。日本の2倍近い平均年収があるアメリカも業界によって、年収に大きな格差があります。
※2023年5月当時の137円/USDで計算
参考: U.S.Bureau of Labor Statistics「Occupational Employment and Wage Statistics」
なお、日本でも高収入の業界はアメリカのランキングと似ています。
【日本で高収入の業界TOP5】
- 1.公益事業(電気・ガス・水道):747万円
- 2.金融業・保険業:656万円
- 3.情報通信業:632万円
- 4.専門的・技術サービス業:544万円
- 5.製造業:533万円
そして、最も平均年収が低いとされた業界も、268万円の宿泊業・飲食サービス業とアメリカと同じでした。
アメリカで高収入の職種TOP5
2022年にアメリカ労働統計局が発表した統計によると、面白いことに高収入の職種は医師が占めていることが分かります。
先ほどの時価総額ランキングではIT企業がトップを独占していましたが、職種ごとの収入となると内容が異なるようです。
アメリカでは日本のように勤務医か開業医かで年収が変わるのではなく、分野によって平均収入が異なります。
そのため、稼げる科目の医師になれば勤務医でも高収入が得られるのです。
以下からは、高収入ランキングTOP5の職業と平均年収についてご紹介します。
5位 整形外科医
アメリカの整形外科医の平均年収は306,620USD(約3,890万円)で、全米に16,260人雇用されています。
整形外科医は日本と同じく、筋骨格の治療を行う科目です。
4位 救急医療専門医
救急医療専門医の平均年収は310,670USD(約3,940万円)で、36,180人が救急治療に携わっています。
救急治療は重病患者や事故などで運ばれてきた患者さんの容態が安定するよう治療する部門です。
3位 口腔顎顔面外科医
口腔顎顔面外科医の平均年収は311,460USD(約3,950万円)です。
雇用人数は5,330人ほど。
口腔顎顔面外科医は口・歯・顎の外科手術や炎症等の治療を行います。
2位 麻酔科医
麻酔科医の平均年収は331,190USD(約4,200万円)で、31,130人ほどいるとされます。
実は麻酔科医は、アメリカでも「収入の高い仕事」の代表格でもあります。
科目に関係なく手術時に命と直結する作業を行うため報酬が高いとされています。
1位 循環器専門医
2021年度の年収1位は循環器専門医で、平均年収は353,970USD(約4,490万円)でした。
雇用者数は18,610人で、新型コロナウイルスの感染拡大も影響しているのではないかと推察されます。
このように、アメリカでは医療業界の報酬が軒並み高い水準であることが分かります。
この状況は働く人にとってはいいですが、アメリカの医療費が抜きん出て高額な理由の1つとも言われており、住む人にとっては複雑かもしれません。
アメリカでは州によっても平均収入に格差がある
アメリカの経済市場は日本と比べられないほど規模が大きいのは事実ですが、州ごとの格差も存在しています。
こちらはアメリカの地域ごとの収入をビジュアライズしたマップです。
画像引用元:地図で見るアメリカの所得格差 —— 大都市圏への富の集中が進む | Business Insider Japan
年収10万USD以上の人が住むエリアは青、年収25,000USD以下の貧困層が住むエリアは赤で示されています。
ロサンゼルス、ニューヨークなど人や企業が集まる都市部は年収が高い人が集まっていますが、郊外には赤いエリアが目立っています。
特に深刻なのが南部の州で、多くの地区で1/4以上が世帯年収25,000USD以下だとされています。
画像引用元:地図で見るアメリカの所得格差 —— 大都市圏への富の集中が進む | Business Insider Japan
経済成長の恩恵を受けているのは、都市部の人々だということが分かりますね。
平均収入が高い=豊かとは限らない
前述の通り、アメリカでは収入が高くて皆恵まれているというわけでもなさそうです。
それはいったいなぜなのでしょうか?中央値とともに日本よりもその理由について解説していきますね。
物価が高い
アメリカの都心部は、日本と比べても物価がかなり高いです。
1食2,000〜3,000円のランチは当たり前、物価を図るのに使われるマクドナルドのビッグマックの値段はアメリカで約854円(5.69ドル)。日本のビッグマックは480円なので、倍近く物価が高いことが分かります。
その原因は圧倒的な人手不足がひとつ。企業は人手を確保するため、人件費を上げざるを得ません。
人件費の上乗せ分はもちろん商品価格へ反映されます。
また、原料高の影響もあります。仕入れ原料や燃料価格の高騰なども相まってインフレ状態になっているのです。
医療費や不動産も高い
アメリカでは医療費・不動産・学費がとにかく高い水準です。
よく、「アメリカで救急車を呼んだら10万円請求された」「盲腸の手術で1泊入院したら500万円かかった」という話しが半ばジョークのように語られますが、決して大げさな話しではありません。
もちろん民間の保険に加入していればカバーされますが、それでも一部分は自己負担するというのも一般的です。
アメリカの医療制度につきましては、以下の記事で詳しく解説しております。
合わせてご覧ください。
アメリカの医療制度を分かりやすく解説!日本との比較や医療保険まで
また不動産価格も、
-
・2020年の金利引き下げ
・ミレニアル世代・ホワイトカラーの住宅購入増
・ベイエリアで数十年単位で続く住宅不足
などの諸要因で高騰しています。
賃貸で契約する場合も家賃はかなり高くなっています。
画像引用元:実は世界がうらやむ日本型デフレ、本当は恐ろしい米国型インフレ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
有名大学の学費は1年で1,000万円近くかかることも珍しくありません。
しかし、こうした物価の上昇が賃金と釣り合っているかというと決してそうとも言いきれないようです。
世界的に根深い人権問題
人権意識が高いイメージのあるアメリカですが、現在でも根深い人権問題が残っています。
アメリカ労働省によると、フルタイムで働く女性と男性の賃金格差は16%あります。同じ時間働いても、男性が1万円稼げるところ、女性なら8,400円しか受け取れないのです。
さらに、アメリカは白人と有色人種の賃金格差も深刻です。白人男性の賃金を100とした場合、アジア系女性は約98%と同等程度の賃金を受け取れるのに対し、白人女性は約80%、黒人女性は約70%、ヒスパニック女性は約57%の賃金になってしまいます。
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「男女賃金格差の現状 ―連邦労働省とEEOCが集計結果を発表」
男女間の賃金格差は日本でも深刻で、「令和4年分民間給与実態統計」によると、2023年の男性の平均給与は563万円なのに対し、女性は314万円。女性の平均賃金は男性の約80%しかありません。中央値になると、男性は484万円、女性は270万円と、その格差はさらに大きなものとなります。
これはアメリカや日本だけの問題ではなく、どの国でも同様の格差が発生しており、世界が今後乗り越えなければならない問題の1つです。
日本がアメリカから見習うべき点は多い
アメリカにも社会的な問題はあるものの、日本も学ぶべき点は少なからずあります。
例えば、
-
・移民による人口増加
・イノベーションの進化
・STEM教育の強化
・利益率を上げる企業の仕組み
・報酬を増やして優秀な人材を集める
・投資が盛ん
これらは全ていいわけではありませんが、参考になる部分も多いでしょう。
ただ、アメリカ風のやり方をすればいいのではなく、本質的な部分を参考にする必要があります。
それは政府や経営者だけでなく、中央の人材を選挙で選ぶ我々1人1人も意識して学ぶべきなのです。
まとめ
アメリカの年収は平均値・中央値ともに日本よりも高い数値でした。
特に高収入なのは医療関係の人々で、平均年収が4,000万円ほどと日本では考えられない水準です。
その一方で医療費は世界に類を見ないほど高く、不調があっても病院にいけない人達も少なくありません。
日本は医療費も物価も安いですが、将来的に期待できる産業がないと厳しい指摘をされることもあります。
自分のキャリアのためにアメリカで学んだり、アメリカで働きたいと考えている方も多いでしょう。
アメリカでは外国人がスマホ等の契約をするのに高いハードルがあります。
そんな時には、ハナセルのように日本で契約してアメリカで使えるSIMを用意しておくと安心。
月額9.99USD〜という格安プランが解約金なしで利用できます。詳細は公式ページをご確認ください。
アメリカ携帯サービスのHanaCell(ハナセル)