今回の記事では、アメリカでの出産についてです。日本とは違うアメリカの妊娠・出産事情や、アメリカの育児を知るために読んでおきたい定番の子育て本を紹介します。
目次
1.病院の選び方
アメリカで出産する病院を選ぶ場合、日本とは病院選びの基準が大きく異なる点を知っておかなければなりません。
1-1.加入している保険が使えるか
アメリカでは日本のような国主導の皆保険制度はありません。
保険会社は民間が経営していて、会社が契約している会社に加入するか、個人で保険会社を選んで契約する必要があります。
アメリカの医療と保険の制度については、こちらでも詳しく解説しています。
『アメリカの医療制度を分かりやすく解説!日本との比較や医療保険まで』
保険会社は民間の業者なので、会社や契約するプランによっても保険のカバー内容は大きく異なります。
・病歴、健康状態に細かく条件がある
・妊娠中は加入できない
・妊娠、出産は保険のカバー範囲外
ということもあるので、保険加入の際にはよく条件を確認しましょう。
また、病院によって対応している保険会社が異なるのも日本とは異なる点です。
保険会社と提携している病院でしか保険が適用されないため、リスト外の病院を利用する場合は保険に加入していても費用は全額自己負担になります。
1-2.希望するケアが受けられるか
医療費の高いアメリカにおいて保険適用か否かは大事な問題ですが、産婦人科とは妊娠初期の検診から出産まで長い付き合いになるので満足できるケア・サポートを提供しているかもよく確認しましょう。
・希望する出産方法が利用できるか
・個室入院ができるか
・産後のケア
・万が一のトラブルがあった時の対応
などをよくご確認ください。
妊娠24週目までに入院手続きを行います。
手続きには、身分証(運転免許証やパスポート)、医療保険カードが必要です。
また、アメリカCDCでは乳児の入院リスクを低下させるため、妊婦の新型コロナウイルスワクチン摂取を推奨しています。
強制ではありませんが、体質やアレルギーなどで問題がなければ摂取しておいたほうが良いでしょう。
アメリカでのワクチン摂取については、『アメリカで新型コロナワクチンを受けられる場所と方法』をご覧ください。
2.アメリカでの出産の流れ
アメリカで出産する際の流れについて解説します。
出産間際は慌てることも多いので、あらかじめ流れを押さえてできるだけ冷静に行動できるようにしましょう。
かかりつけ医が決まったら、病院側と相談して「バースプラン」を立てておきましょう。
バースプランとは、出産方法、産後に病室でどう過ごしたいか、病院側のスタッフに求めることはなにかを決めておく出産計画です。
たとえば出産方法は自然分娩にするか、無痛分娩にするかといった物から、家族の立ち合い、陣痛中に必要なものなど細かい部分まで最初に決めておきます。
宗教によっては、産後すぐの割礼を希望する人がいたりするので、アメリカでは個々の文化・宗教・生活スタイルに合わせたプランニングをするのが一般的です。
2-1.出産の兆候が見えたら入院
陣痛・破水など、出産の兆候が現れたら病院に行って入院します。
アメリカは車社会ですが、自分で運転することは避けましょう。
家族・友人に運転してもらうか、タクシーを利用するのが一般的です。
迅速に手配できるように、タクシー配車アプリをスマホに入れておきましょう。
子宮口が開いていたら分娩室に移り、任意の方法で出産を行います。
陣痛から出産までの時間は、人によって大きく差があります。
妊娠後期になったら、入院に必要なグッズをバッグにまとめておきましょう。
2-2.任意の方法で出産
自然分娩・無痛分娩など、最初に決めていた方法で出産を行います。
アメリカでは60%ほどが無痛分娩を選ぶとも言われており、ご自分の体質・希望などに合った方法をお選びください。
赤ちゃんが生まれたらバイタルチェック・身長測定・点眼などを行います。希望があれば、へその緒は父親が切ることもあるようです。
病院によっては、付き添いの家族が出産の様子を撮影することは禁じられていることもあるため、ルールを順守しましょう。
アメリカでは、産後2日前後(帝王切開の場合でも4~5日)と日本よりも短期間で退院しなければいけません。
病院で生まれた子供は、退院までに出生届の申請を行います。
日本国籍も取得する場合は、日本にいる代理人が自治体の役所に出生届を提出するか、在米の総領事館に申請するかを選びましょう。
またアメリカのベビー用品については、以下の記事で解説しております。
合わせてご覧ください。
アメリカのベビー用品のマストアイテムと選び方を解説
3.アメリカで出産にかかる費用について
出産にかかる費用はその人が入っている保険会社やプラン内容によて異なります。
保険のありなしで費用が変わるので、それぞれの場合の目安を見ていきましょう。
3-1.保険適用する場合
加入している保険が適用される病院の場合は、年間の自己負担限度額が設定されているため実質負担額は人によって異なります。
帝王切開などなく普通に出産する場合病院からの請求は30,000USD前後が相場、自己負担額は数十万円~100万円くらいが多いようです
帝王切開、早産、多子出産などをする場合は請求額も高くなり、実質負担額も高額になる傾向があります。病院・保険会社からの請求金額が不当だと感じた場合、医療請求交渉団体を利用して減額を交渉することもあります。
3-2保険適用外の病院で出産する場合
保険適用外の病院や、保険未加入者が出産する場合は病院からの請求を自分で支払う必要があります。
30,000USD(日本円で400万円前後)を自分で支払うことになりますが、低所得者向けの医療費免除保険「メディケイド」があります。
ニューヨーク州など、アメリカ国民以外でもこのメディケイドを使用できる地域があるので、病院の保険係や最寄のHuman Resources Administration(移民局)にご相談ください。
4.アメリカでは妊娠中の体重管理がありません
妊娠中、日本では胎児の重さを管理するために、妊婦さんの体重の増え方を管理したり、食べ物や栄養をかなり気にします。が、アメリカでは母体が健康で、胎児にも問題がない場合は体重の増減にあまり医師が積極的に介入せず、妊婦さんに極力ストレスを与えない配慮があると感じます。
そんな感じで、アメリカでの妊娠中の医療は、問題がなければとてもおおらかで一見制約は少なく、ゆる〜い印象です。
5.産んだらすぐに退院!アメリカのお産
アメリカの医療費はとても高いと悪名高いです。妊娠中の検診や分娩費用などには保険が効くものの、通常分娩の場合は産後1~2泊で病院を出されます。帝王切開でも2~3泊。日本では考えられない対応です。
これは人種が違うからなのか、文化が違うからなのかわかりませんが、2~3泊は日本のお産事情を知っている身からするとかなり手厳しいですよね。
日本では「産後3週間は産後の肥立ちのためになるべく寝て過ごす」という考えが一般的で、産後約1週間入院して、赤ちゃんのお世話の指導、授乳やその後の過ごし方の指導にも重きを置きますが、アメリカはあくまでも赤ちゃんが無事生まれ、母体も普通ならば、病院側の役目は終わった、という感じです。
産後の食事もあまり良いものでない病院が多く、分娩を終えて疲れているお母さんの元に、時間構わずに検査やお世話の指導、有料の写真の申し込み、バースサーティフィケイト(出生証明書)の代理提出の手続きなど、ひっきりなしに人が訪ねて来ます。
お母さんが休めるのは家に帰ってから、という感じです。しかし、退院後すぐに赤ちゃんの検診のため小児科に連れて行ったり、お母さんも検診を受けに行ったりなど、家族の助けがないとどうにもなりません。やっぱり日本のように1週間入院させておいてくれたらいいのに…と思ってしまいます。
6.アメリカで一番読まれている妊娠・出産・子育て本
日本でもたくさんの妊娠・育児の情報の本が出ていますが、アメリカでも色々売られています。
中でもアメリカで一番読まれている妊婦さん向けの妊娠・育児本は ”What to Expect When You’re Expecting” という本。「妊娠したら知っておきたいこと」という意味ですね。アメリカでは知らない人はいないというベストセラーです。
頻繁に改訂版が出いていて、医療に関する情報がアップデートされています。アマゾンで$10前後、キンドル版も対応しています。その後、1歳児、2歳児編も別冊で販売されています。
この本は世界中で翻訳が出ていて、日本でも「すべてがわかる妊娠と出産の本」という題で販売されています。
しかし、アメリカと日本の両方のバージョンを読むと、特にお産までの医療と、赤ちゃんが生まれてからの親の子に対する接し方、寝かしつけの部分が随分と違うことに気づくかと思います。理由は、両国の出産に関する医療事情がかなり違うこと、そして子供を取り巻くしつけや対応の部分は両文化の根底が違うことなどがあげられます。
7.まとめ
いかがでしたが?アメリカの出産事情や育児本を私の実体験も交えて紹介してきました。
異国での出産・育児はハラハラドキドキですが、この記事の情報が少しでもお役にたてばと思います!
また、他の記事でアメリカのベビー用品やアメリカの離乳食についても解説していますので、合わせてご覧ください。