アメリカでは日本よりもクレジットカードが広く普及しています。スーパーマーケットでの買い物はもちろん、コンビニやファストフード等の少額決済においても、クレジットカードの使用が可能です。
しかし、クレジットカードが生活必需品となっているアメリカでも、外国人が簡単にクレジットカードを作ることはできません。アメリカでクレジットカードを作る際は、クレジットヒストリーが重視されるためです。
そこで今回は、アメリカのキャッシュレス決済事情や、クレジットヒストリーがなくてもクレジットカードを作る方法について解説します。
目次
1.アメリカのキャッシュレス決済事情(クレジットカード含む)
2016年におけるアメリカのキャッシュレス比率は46.0%、日本のキャッシュレス比率は19.9%
です。アメリカでは、日本の2倍以上もキャッシュレス決済が利用されています。
アメリカのキャッシュレス、スマホ決済事情については、以下の記事でも解説しております。合わせてご覧ください。
クレジットカードは現金と比較して、運用コストが抑えられるメリットがあります。また、利用したお金の流れが記録されるため、偽札対策や盗難対策にも効果的です。
アメリカでは、大きな金額の買い物だけでなく少額の買い物においてもクレジットカードを利用できます。クレジットカードがなければ、ローンが組めないだけでなく、個人の信用度にも影響するため、クレジットカードは生活必需品の一つです。
また、最近ではクレジットカード以外にも電子マネーやスマートフォン決済等のキャッシュレス手段が普及しています。アメリカにおいても、クレジットカード以外のキャッシュレス決済を利用できるお店が増加中です。
ただし、アメリカではスマートフォン決済が開発される以前にクレジットカードが普及していたため、逆に先端技術であるQRコード決済やスマートフォン決済の普及が他国に比べて遅れている傾向にあります。
そのため、アメリカでは未だにクレジットカードとデビットカードが決済手段として未だに根強く浸透しています。アメリカで便利に生活し続けるためには、クレジットカードの所持が必須と言えるでしょう。
2.渡米直後の日本人は簡単にアメリカでクレジットカードを作れない?
クレジットカードはアメリカで生活するうえでの必需品ですが、アメリカに訪れた直後にクレジットカードを作ることは簡単ではありません。なぜなら、クレジットカードを作成する際の条件が厳しいためです。
現地のカード会社でクレジットカードを作成する際には、主に下記の3つが必要なものとして挙げられます。
- ソーシャルセキュリティーナンバー(Social Security Number)
- アメリカの銀行口座
- クレジットヒストリー
ソーシャルセキュリティーナンバーは社会保障番号を意味し、アメリカにおいて個人を識別する番号となります。外国人の場合は、アメリカでの労働を許可された人のみに発行されます。
また、クレジットカードを作成するためには銀行口座が必要です。現地銀行口座の開設も、基本的にアメリカに居住する人を対象とするため、観光で訪れた方は開設できません。
そしてクレジットヒストリーとは、クレジットカードやクレジット契約に関する利用履歴・支払い状況に関するデータを指し、個人の信用度に関わる重要な指標となります。クレジットヒストリーを作るためには、まずクレジットヒストリーがなくても作れるクレジットカードを保有することが重要です。
3.アメリカでクレジットカードを作る方法
ただ、一切作ることができないわけではありません。
ここからは、アメリカでクレジットを作る際に必要なものを紹介します。
3-1.アメリカへの定住
日本人がアメリカでクレジットカードを作るためには、まずアメリカに定住しなければいけません。
日本のクレジットカード会社が、カードの発行条件に「日本国内に居住する方」という項目を含んでいるのと同じで、アメリカのカード会社も、基本的には「アメリカ国内に居住する方」をカード発行の対象としています。
よって、まずはアメリカに移住し、現地で住所を取得するところから始めましょう。
3-2.ソーシャルセキュリティーナンバー
また、ソーシャルセキュリティーナンバーとあわせて、納税者番号も必要不可欠です。納税者番号は、アメリカにおいて納税義務がある方に割り当てられる番号で、ソーシャルセキュリティーナンバーと同じく、アメリカで働く際には加入が義務付けられています。つまり、アメリカで勤務する方は、必然的に上記2つの番号を取得できるということです。
ちなみに、ソーシャルセキュリティーナンバーへの加入は、H-1やE-1の就労ビザ、パスポートや入国カードがあれば申請可能です。そして、納税者番号を取得するには、当然アメリカで収入を得て、税金をきちんと支払う必要があります。
ソーシャルセキュリティーナンバーについては、以下の記事でも詳しく解説しております。合わせてご覧ください。
3-3.アメリカの銀行口座
日本からインターネットを介して申し込むか、現地の銀行窓口に直接訪れて申し込むことで開設できます。ただし、どちらの方法で申し込む場合でも英語対応になるため、その点に関しては留意しておきましょう。
また、当然のことですが、アメリカの銀行口座への入金は現地通貨で行うことになります。よって、日本から入金する場合、入金手数料だけでなく両替の手数料も発生してしまうため、注意が必要です。
アメリカの銀行口座開設方法は以下に詳しく解説しております。合わせてご覧ください。
3-4.クレジットカードヒストリー
日本の場合、クレヒスを管理するのはJICC、CICといった情報信用機関ですが、アメリカの場合はTransUnion、Equifax、Experianが管理しています。つまり、日本でのクレヒスはまったく関係なく、あくまでアメリカにおいて履歴を作らなければいけないということです。
よって、アメリカに渡った直後にクレジットカードを作るのは、少しハードルが高いと言えます。
4.アメリカで早くクレヒスを作る方法
こちらはデビットカードに近いもので、基本的なクレジット機能は付帯していません。引き落とし口座に300~500ドルのデポジットを用意すれば、その範囲内でカードを利用できます。
セキュアドクレジットカードも、アメリカでは正式はクレジットカードとして認められているため、利用すれば当然クレヒスが残ります。
ちなみに、クレジット機能がないにもかかわらず、セキュアドクレジットカードが正式なクレジットカードとして認められている理由としては、通常のデビットカードと決済方法が異なることが挙げられます。
デビットカードは、利用した際に銀行口座を確認し、残金があれば商品が購入できるという仕組みです。一方、セキュアドクレジットカードは、利用の際に口座確認が行われず、クレジットカードと同様に、月締めで利用金額が一括請求されます。
5.クレジットヒストリーがなくても作れるアメリカのクレジットカード3選
アメリカで発行される多くのクレジットカードは、渡米直後に作成できません。しかし中には、アメリカでのクレジットヒストリーがない日本人でも作れるクレジットカードが存在します。
ここからは、クレジットヒストリーがなくても作成できるクレジットカードの中から、特におすすめできる3つのクレジットカードを紹介します。
5-1.JAL USA CARD
「JAL USA CARD」は、日本の航空会社であるJALが提供するクレジットカードです。アメリカに出国する90日前から申込が可能になるため、これからアメリカに駐在する予定がある日本人にとっては利便性の高いカードと言えるでしょう。
「JAL USA CARD」を利用すると、マイルと呼ばれるポイントプログラムを貯められます。貯めたマイルは、航空券の購入・アップグレード・レンタカー予約・商品交換等に利用可能です。
また、クレジットカードの特典には「ベーシックリワード」と「プレミアムリワード」の2種類があります。
「ベーシックリワード」は、2ドルごとに1マイルの特典が付き、年会費20ドルのみの支払いで利用できます。「プレミアムリワード」は、1ドルごとに1マイルの特典が付き、年会費に加えてアップグレードフィー50ドルが毎年必要となります。
特典コースは、クレジットカードの利用額に合わせて選ぶことをおすすめします。
5-2.ANA USA CARD
「ANA USA CARD」は、日本の航空会社であるANAが提供するクレジットカードです。「JAL USA CARD」と同様、アメリカに出国する90日前から申込が可能となります。
「ANA USA CARD」は初回利用時にボーナスマイルとして5,000マイルを獲得でき、カード利用時には1ドルごとに1マイルが貯まります。貯めたマイルは海外旅行時の航空券購入やホテル予約、提携パートナーの各種ポイントへ交換可能です。
さらに、ANAはスターアライアンスに加盟しており、ANAグループの運航便でフライトボーナスマイルも受け取れます。「ANA USA CARD」は、ユナイテッド航空等のスターアライアンス加盟航空会社をよく利用する方におすすめと言えるでしょう。
また、オンラインバンキングからは、クレジットヒストリーを基に算出されたクレジットスコア(FICOスコア)を無料で確認できます。
5-3.セキュアドクレジットカード
アメリカでクレジットカードを発行するためには、多くの場合クレジットヒストリーが必要です。しかし、クレジットヒストリーはクレジットカードを利用しなければ作れません。
そこでおすすめなのが、4.アメリカで早くクレヒスを作る方法でも紹介した「セキュアドクレジットカード」です。セキュアドクレジットカードは、クレジットヒストリーがない人のために、アメリカの銀行が発行している、「銀行口座と紐づくクレジットカード」です。
口座に一定額以上を預金することを条件に、預金額に見合った限度額のセキュアドクレジットカードが発行されます。ただし発行には、他のクレジットカードと同様に審査があります。審査には、担保となる保証金や一定の収入が必要となることを覚えておきましょう。
6.クレジットヒストリーを良くするためには?
アメリカでの生活においてクレジットヒストリーは、個人の信用度をチェックするための重要な基準となります。そのため、クレジットカードを利用する際は、クレジットヒストリーを磨くための意識が肝心です。
クレジットカードを磨くための方法はいくつかありますが、それらの中でも特に大切なポイントは、下記の2点です。
- 長期間にわたり毎月利用する
- 支払いの延滞は絶対にしない
クレジットカードを所持していても、使用しなければクレジットヒストリーは作られません。クレジットカードを定期的に利用して、良好なクレジットヒストリーを作りましょう。
特に、毎月の利用を長期間続けることにより、問題なく支払いができる可能性が高いと評価されやすくなります。そのため、長期間にわたり毎月利用することは、良好なクレジットヒストリーへの近道です。
また、クレジットヒストリーにはカード利用履歴だけでなく、入金や延滞の情報も記録されます。たとえ長期間の利用があっても、延滞や一部入金等、期日までに支払いができなかった場合は信用度が著しく落ちてしまうでしょう。
良好なクレジットヒストリーを作るためには、支払いを延期した履歴を絶対に作らないことが大切です。
7.アメリカで現金が必要なタイミングとは
コーヒーを一杯頼むだけでもクレジット払いが普通なほどキャッシュレス決済が一般的になっているアメリカでは、クレジットカードのみを持ち歩いて出かけるという人も珍しくありません。
しかし、限られたタイミングとはいえアメリカでも現金が必要になる場面があります。
例えば、チップの支払いの際などですね。
アメリカにはサービスに対してお礼にチップを渡す文化があります。
関連記事:アメリカでチップをスマートに払う方法を解説|払う場面・理由・金額相場など
レストランなどでは現金をテーブルに置いておく方法のほかに、クレジットの支払いと同時にチップの金額を記入して支払うこともできるようになっています。
しかし、ベッドメイキングをしてもらった時や、ホテルのドアマンや手荷物を運んでくれるポーター、タクシーの運転手など、直接チップを渡す場面も多々あります。
そういったときのためにあらかじめ現金を用意しておくと良いでしょう。
また、日本でも同様ですが個人経営の小さなお店などではキャッシュレス決済を導入しておらず、現金の支払いしかできないところもあります。
キャッシュレス対応の店舗でも機械の故障やシステムトラブルが起きる可能性もゼロではないため、もしものために現金を持ち歩くと不安なく観光や移住生活が楽しめます。
8.アメリカでクレジットカードを作るメリット
キャッシュレス決済が普及するアメリカで生活する上で、必需品とも言えるクレジットカード。
では、クレジットカードの作成・利用には実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。
アメリカで現地のクレジットカードを作ると良い理由について、いくつかご紹介したいと思います。
8-1.クレジットヒストリーの構築
アメリカではクレジットカードヒストリーというクレジットやカードローンの利用履歴が重要視されます。
クレジットヒストリーの構築のためには、現地のクレジットカードを作成してアメリカ国内での利用をすることが必要になります。
クレジットヒストリーのスコアによって分割払いの際の金利が高くなってしまったり、そもそもクレジットヒストリーがないと住宅や車のローンを組めないことが多いので、アメリカでの生活をスムーズにするためにも早めに現地の口座とクレジットカードを作ってクレジットヒストリーを構築しておくと良いでしょう。
しかし、そのクレジットカードを作る際にもクレジットヒストリーが必要になります。
移住したばかりでクレジットヒストリーを持たない方は、まずアメリカの銀行口座を開設し、デポジットを支払って金額内での利用ができるセキュアカードを作成すると良いですね。
こまめにセキュアカードを利用し、しっかり期日内に支払いを終えるようにして、一定期間クレジットヒストリーをためて正式なクレジットカードの申請を行いましょう。
8-2.個人の信頼を証明できる
前述したクレジットヒストリーだけではなく、アメリカでは、クレジットカードが個人の証明や信頼になる場面が多くあります。
例えば、アメリカなど海外のホテルではチェックインする際にデポジット(保証金)を払わなければいけないことが多くあります。
フロントでデポジットに現金を要求された際も、クレジットカードを提示すればスムーズにチェックインできる上、チェックアウト時に保証金分の請求が自動的にキャンセルされます。
また、レンタカーなどの利用、病院の受診時などにも、支払い能力を見るためにクレジットカードの提示が必要になる場合があります。
アメリカではクレジットカードは個人の信頼の証明の役割も果たしているので、生活に欠かせないものになっています。
8-3.盗難などの犯罪に対処しやすい
治安の悪い地域では、置き引きやひったくりなどの盗難被害が多くなります。
もしもそのような被害にあった場合でも、クレジットカードであればカード会社に連絡してカードを停止することですぐに対処することができます。
カード会社によっては被害の届け出があればさかのぼって保障を受けられる場合もありますし、現地での再発行も可能です。
そういった場合、アメリカ国内のクレジットカードであれば、さらにスムーズにやりとりが可能です。
トラブルにあう可能性に備えて、カード会社の連絡先はしっかりメモしておきましょう。
また、偽の高額紙幣を使用してお釣りとして本物の紙幣を受け取るという犯罪が起きているアメリカでは、そもそも高額紙幣の受け取りに抵抗のあるお店もあります。
スムーズにやりとりするために、クレジットカードでの支払いができると良いでしょう。
8-4.クレジットカード付帯のサービスが受けられる
カード会社によって、クレジットカードに様々なサービスが付帯しているものもあります。
海外旅行保険付きのものや、ショッピング保険、空港のラウンジが無料で使えるもの、対象店の割引サービスなど、クレジットカードによって異なる特典があります。
特に、アメリカのクレジットカード会社で海外旅行傷害保険に加入すれば、日本に一時帰国した際などに利用できることもあります。
クレジットカードと同時に加入できれば手間もかからず、便利ですね。
アメリカのクレジットカードは日本と比べて還元率やマイル獲得率が高いものも多いので、お得に利用できます。
事前に調べて受けたいサービスでカード会社を選択するのも良いかもしれません。
まとめ
アメリカでの滞在時におけるクレジットカードの有無は、生活の便利さを大きく左右します。
しかし、アメリカでクレジットカードを作る場合は、これまでのクレジットカード利用が大きく影響するクレジットヒストリーが重要です。初めてアメリカに滞在する場合は、クレジットヒストリーがなくても審査に通るクレジットカードを作成しましょう。
またクレジットカードを作成した後は、クレジットヒストリーを磨くことが肝心です。クレジットヒストリーで信用を落とすことがないように、支払いの遅延はしないように注意しましょう。
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